恋愛・失恋

20代後半誕生日に振られた。つらい別れが運命のパートナーを運んできてくれた話


20代後半誕生日に振られた。
でも、つらい別れが運命のパートナーを運んできてくれた話

著者:てんこ(女性・20代後半)

 

結婚に焦りだす20代後半。

運命の相手だと思った恋人から、誕生日の日に「重い女」とふられる。

自分が何故重い女なのか理解できず、食事も手につかず、ふさぎ込む毎日が続く。

ある日、友人のすすめで友人の男性の先輩と会うことになる。

そこで、重い女と言われた経緯など話すうちに彼から「つらかった思い出は、つらさだけじゃなくて、新しい幸せを運んできてくれる」と言われ、自分自身を見つめ直すこととなる。

それまで恋人に、結婚や運命を重ねていたことに気がつくことが出来た私は、その価値観を捨て、つらい状態から抜け出させてくれた彼と結婚することになったのである。

20代後半、周りは結婚・出産ラッシュ

25歳をすぎたころから、周りの友達が結婚しだした。

SNSを開けば、結婚か出産の話ばかり。

私は、彼氏と別れたばかりで、仕事も楽しくもつまらなくもなく、なあなあの毎日を送っていた。

焦りがないと言えば、嘘になる。

30歳までに結婚出来ればいいやとなんとなく思っていたが、あと数年で結婚したい人と出会えるのだろうか。

今まで、何人かと付き合ってきたが、どの人も自分から好きになった人ではなかった。

30歳までに、なんて悠長なことを言ってる場合ではない。

運命の相手を探さなければ、と思いその日から初めて合コンや街コンに参加するようになったのである。

初めて自分から好きになった人

合コンや街コンに何回か参加をしたが、運命の人を探す場というより、遊び相手を探すような場であったことを知り、途方に暮れてしまった。

そんな合コン帰りの夜、駅前で声をかけられた。

ナンパかと一瞬無視をしたが、よく聞けばカットモデルを探しているという内容であった。

カットモデルならばと承諾し、その場で美容師さんと連絡先を交換した。

身長がすらっと高くて、笑った顔が素敵な人だった。

カットモデル当日、彼の美容院で髪を切るのが少し、楽しみな自分がいた。

髪を切っている間、たわいもない会話をしていたが、その時間は胸が高鳴る程楽しい時間であった。

「また、カット以外の練習に付き合ってもらえますか?」

という彼のお願いにも、二つ返事でOKしてしまうほど、その日の私は浮かれていた。

切ってもらった髪を見ては、彼を思い出している自分がいて、久しく好きになるということを思い出していた。

ついに出会った人は、運命の人?

カットモデルをしてから、数週間後にまた彼から連絡があった。

今度はパーマをかけるモデルを探していて、やってくれないかという内容だった。

ついこの間カットモデルをしたばかりだったので、しばらく連絡はないだろうと思っていただけに、嬉しい内容だった。

パーマをかけている間中、ずっと会話をしていたが、そこで知ったのが、同い年であること、共通の知人がいることであった。

偶然に会話がはずみ、今度飲みに行きましょうという誘いをうけ、私は有頂天になってしまった。

飲みに行く日が近づくにつれ、私は彼とのたった少しの偶然を勝手に運命的だと思い込んでいた。

実際二人で飲んだその日に、彼から告白をされ、付き合うこととなったのだ。

付き合い初めてからは、毎日が新鮮だった。

お洒落な彼の買い物に付き合ったり、髪をいじってもらったり、私たちは出会った期間は短かったにも関わらず、思いの外趣味や共通することが多くあったのだ。

彼の家に何度か遊びに行ったりし、半同棲のような日が続いた。

私は、きっとこのまま彼と結婚するのだと、その頃は疑いもしなかった。

誕生日に重い女と告げられて…

そんなある日、彼と連絡がとれない日が何日か続いた。

美容師の大会があると聞いていたので、仕事で忙しいのだろうと思い、無理に連絡をとろうとはしなかった。

4日に1回のペースでメールが届くというやりとりをしばらく続けていたが、会えない日も続き寂しさがあった。

それに、もうすぐ私の誕生日でもあったので、誕生日くらい会ってくれるだろうと、その日だけが楽しみになっていた。

しかし、誕生日前日の夜、彼から「明日は会えない」と一言メールがきたのである。

もう1ヶ月ほど会っていなかったので、私は不満を爆発させた。

いくらなんでも、ひどすぎると思った。

日付が変わったその時に返ってきた返事は「お誕生日おめでとう」でも「ごめん」でもなく、「お前、重いよ」の一言だった。

ショックだった。

勿論、返信はしなかった。

返信をすれば、返ってくる言葉が何であるかくらい、この時の私でもわかっていたのだ。

私は26歳の誕生日に、運命だと思った人からふられてしまったのだ。

悲劇のヒロインになってみて

誕生日に予定が空いてしまった私は、家にいるのも惨めだったので、出かけることにした。

彼の美容院を遠くから覗いてみたりした。

彼の家に置きっぱなしの服や化粧品を回収しようか、迷った。

でも、結局行かないことにした。

どこかでばったり、彼に会わないかなんて思いながらウロウロしたりした。

一人で泣くのをこらえながら、目的もなく歩いて声をかけられた。

「髪を切らせてくれませんか」という内容だった。

「もう少し髪が伸びたら、切らせてね」という彼の言葉を思い出し、悲しくなって「今、切ってもらえますか」とお願いした。

失恋して、髪を切るなんて漫画の中の話だとずっと思っていた。

実際、髪を切ったからといって彼への想いはなくならず、その日から泣いて過ごした。

ごはんも仕事も手につかず、胃がキリキリ痛むなと思った時には、ノロウィルスにかかっていた。

数日間、吐き気と熱におそわれながら、私はずっと悲劇のヒロインになっていた。

何がいけなかったのか、私の何が重かったのか、時には彼を恨んだりした。

病が治ったころ、私の体重は6キロも落ちていた。

もう、一生治らなくてもいいのに、ずっと寝ていたい。

彼こそが運命だと思ったのに、最悪の26歳の始まりだと自分の運命を呪ったりした。

大切だと思った恋は、次の幸せを運んできてくれる

体力も回復して、仕事にも復帰し、またなあなあな生活を送る日が続いた。

私は、彼のSNSを追いかける日がつづいた。

今日は、何しているんだろうかと決して連絡は取らないけれど、ずっと追いかけていた。

そんな私を見た、友人が気分転換に合コンをしようと提案してくれた。

気晴らし程度ならと、友人と友人の先輩2人と4人で飲むことになった。

全く乗り気ではなかった飲み会だったので、男性2人の顔もろくに覚えておらず、そのうちの1人から飲み会後に連絡が来た時は、考えこんでしまう程だった。

「2人で飲みに行きませんか」というお誘いだったので、まあいいかという気持ちで会うことに。

改めてその人と会うと、顔はタイプではなかったが悪くないという印象だった。

話しているうちに、彼が聞き上手であることをいいことに私は美容師の彼の話をしていた。

自分のどこが重いのかと、気がついたら自分の今までの恋愛や思っていることを全て打ち明けていた。

全て吐き出して、ふと冷静になって、ほとんど初対面の人にこんな自分ばかりの話をしてしまったことに恥ずかしくなった。

けれど、彼は一言優しく「大丈夫。つらかった思い出は、つらさだけじゃなくて、新しい幸せを運んできてくれるよ」と言ってくれたのだ。

その言葉が、閃光のように輝いてみえたのと同時に、何度も自問自答した「自分のどこが重いのか」という答えがわかった気がしたのだ。

つらい失恋から見つけた、本当の自分

私はずっと「はやく結婚したい、周りに置いて行かれないように」と思っていて、運命の人と勝手に思っていた相手を追い込んでいたのだ。

相手のことを考えるより、いつも「結婚」を意識して接していたことに今更ながら、気づいたのである。

それまでの恋愛も、本当に相手をみていたか考えると必ずしもそうでなかったことに初めて気がついた。

「彼氏がいる自分」「居場所がある自分」それらを求めて恋していたことに、26歳になってやっとわかったのである。

それに気づかせてくれたのは、友人が紹介してくれた先輩であった。

今度は、先日のお詫びを兼ねて私から彼を誘い、お互いの話を沢山した。

勿論「結婚したかった自分」の話も包み隠さず話した。

彼の過去の恋愛話を聞いたりした。

お互いに自分の全てをさらけだして、私たちは付き合うことになった。

もう恋人の後ろに「結婚」や「運命」を見たりすることのなくなった私は、人と付き合う喜び、相手を思う幸せを感じることが出来る様になったのである。

そして、私たちは自然と結婚することになったのである。

失恋で立ち直れない、あなたへ

もう彼以上の人は現れないかもしれないと、思っているあなたへ。

私もそうだった。

彼こそが運命の相手だと思って何日も何日もふさぎ込んでいた。

つらいことがあると、次々につらいことが舞い込んできて、自分の人生は呪われているのではないかと思ったりもした。

でも、大丈夫。

つらいことは、そんなに続かない。

どこかの誰かが手を差し伸べてくれる時もあれば、小さな変化があなたを変えるきっかけになるかもしれない。

つらいことは、新しい自分を発見する機会であるのだから。