◇花園法律事務所webへようこそ。
このサイトでは、様々な法律相談にカウンセリングしていく花園弁護士のお話を掲載しています。
今回は、父親の愛人が生んだ異母兄弟との相続問題。
- 愛人が生んだ異母兄弟は相続から廃除できる？
- 相続の範囲や順位は？
などについて、花園弁護士が解説しています。
◇今回の舞台は花園弁護士のお宅
当サイトの記念すべき最初のエピソードは、花園邸が舞台。
どんなお住まいなのか気になりませんか？
そこは玉川上水の畔。
東京郊外の多摩西部にあたる桜の名所「羽村堰」。
多摩川からの水源地玉川上水に沿って桜並木が展開されています。
ゆっくり流れ降る玉川上水の澄み切った水流の底では艶やかな彩の錦鯉が泳いでいます。
玉川上水の西寄りには山毛欅の林が展開され、その一角には竹林がつづいています。
その脇には、かなり広いグリーンの芝生がくり広げられ、その北側に瓦葺き２階建て、グリーンのモダンな住宅が浮かびあがります。
白い生地に黒光りの砂子を散りばめた花崗岩の門柱には、「弁護士 花園咲一郎」と刻まれた金文字の表札がクローズアップされます。
花園弁護士のお宅をそっと覗いてみましょう…
Contents
花園邸の応接室ではどんな法律相談が？
ガウン姿の花園弁護士がソファーにもたれています。
壁に掛けられた日めくりカレンダーは休日。
そこへ派手な和服姿の若い女性がはいってきます。
「はじめまして。休日ですのに申し訳ありません。花園法律事務所の問い合わせフォームで面接をおねがいしました白石雪子ともうします」
女性は深く頭をさげます。
「まあどうぞ。お掛けになって」
花園弁護士は、にこりとして女性のヘアスタイルから両足の足袋まで眺めおろします。
「はい。失礼します」
「それではどんな案件か、その内容をお聞かせください」
花園弁護士はにこりと微笑みかけます。
「はい。それでは、ありのままをもうしあげます」
白石雪子は花園と視線をあわせて語りはじめます。
父の愛人が産んだ異母兄弟を相続から排除したい！クライアントの背景は！
それではもうしあげます。
父は八王子の駅前に事務所を構えて不動産業を営んでいました。
初めは街の不動産屋にすぎませんでしたが、経営手腕に長けた父は次第に業績をあげ、現在は、都心に数個の貸しビルを保有して収益をあげています。
実は遺産が数十億円という父が死亡して相続が開始されました。
相続人は被相続人の配偶者にあたる母とその子にあたる５人兄弟の筈でした。
ところが、葬儀の席に突然、美人の若い女性が現れました。
葬儀が終わってから、彼女は、「あたしにも相続権があります」と主張するので、大混乱になりました。
この女性は、父が愛人に産ませた、あたしたちとは母が異なる兄弟でした。
なんというのですか。あの「異母兄弟」でしょうか。
この人も、母親だけが異なりますが、父の血と血がつながった兄弟です。
相続権はあるかもしれませんが、兄弟とは思いたくありませんし、
相続させたくありません。
この異母兄弟を相続人から廃除したいのですが、これを平穏に処理するにはどうしたらよいでしょうか。
異母兄弟を花園弁護士の相続問題カウンセリングは！
ご事情はよくわかりました。
結論を先にいえば、特別の事情がない限り、お父さんの愛人の子供を相続から廃除することは難しいでしょう。
なぜそうなるか、その理由をコメントしていきましょう。
まずその方が相続人にあたるか？
その女性が相続人にあたるかを確かめてから、お父さんの相続から廃除することができるか、について考えてみましょう。
愛人が産んだ異母兄弟は相続人にあたるか！
まず愛人が産んだ「異母兄弟」は相続人にあたるかを考えてみましょう。
そもそも相続人の正体はどうでしょうか。
じぶんが死亡したため相続される人（被相続人）の財産法上の地位を承継する人を「相続人」といいます。
だれが相続人になるかは、民法が定めています。
次の人が相続人になります。
死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外は、次の順序で配偶者とともに相続人となります。
第1順位
死亡した人の子供
子供がすでに死亡しているときは、その子供の直系卑属としての子供（亡くなった人の孫）が相続人となります。
このケースでは、「代襲相続人」といいます。
死亡した人の子に子供も孫もいるケースでは、より近い世代にあたる子供の方を優先します。
第2順位
死亡した人の直系尊属：父母や祖父母などです。
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。
第3順位
死亡した人の兄弟姉妹。
その兄弟姉妹がすでに死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないときに相続人となります。
相続における嫡出子と非嫡出子
相続人となる「子」には「嫡出子」と「非嫡出子」が考えられます。
嫡出子とは「法律上の父母」から生まれた子です。
雪子さんら５人兄弟は嫡出子です。
これに対し非嫡出子は、法律上は夫婦でない男女から生まれた子です。
母とは出産の事実により、父とは認知により，法律上の親子関係を有します。
本件において、愛人に産ませた女性はこの非嫡出子にあたります。
つまり、その女性は、お父さんに認知されていれば、非嫡出子ではありますが被相続人の「子」にあたり、相続人になります。
愛人が産んだ異母兄弟を相続人から廃除できるか！
それでは、愛人が産んだ女性を本件の相続人から廃除できるでしょうか。
民法によれば、次のような事由があるときには、相続から廃除することができます。
- 被相続人に対して、重大な侮辱を与えたとき
- 推定相続人にその他の著しい非行があったとき
- 被相続人の財産を不当に処分したとき
- 賭博を繰り返して多額の借財を作りこれを被相続人に支払わせたとき
- 浪費、遊興、犯罪行為、暴力団や極端な右翼団体・左翼団体など反社会集団への加入・結成、異性問題を繰り返すなど親泣かせの行為をしたとき
- 重大な犯罪行為をして有罪判決を受けているとき
たとえば5年以上の有期懲役、無期懲役または死刑に該当するような犯罪行為がこれにあたります。 - 相続人が配偶者の場合には婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
たとえば愛人と同棲して家庭を省みないなどの不貞行為がこれにあたります。 - 夫婦関係の事実が存在しないとき
たとえば遺産目当てに戸籍上の夫婦になったにすぎないときがこれにあたります。 - 相続人が養子のときには縁組を継続しがたい重大な事由があるとき
たとえば遺産目当てに戸籍上の養子になったにすぎないときがこれにあたります。
ここにあげたような事由に該当しない限り、お父さんが愛人に産ませたお嬢さんを相続人から廃除できません。
相続人の全員が集まってよく話し合いをなさって、遺産の分割をしましょう。
よろしければ、わたしが立会人として同席します。
相続問題の解説を終えて…花園家の応接室
花園家の応接室では、花園弁護士がソファーにもたれています。
「なにか、おわかりにならないことはありますか」
花園弁護士は、背筋を伸ばして雪子の顔を覗き込む。
「はい。懇切なコメントよくわかりました」
「そうですか」
「ありがとうございました」
「話し合いの日時と場所をお知らせくだされば、同席しますから」
「はい。後ほど、おしらせいたします。ありがとうございました」
白石雪子は立ち上がりハンドバッグを持ちあげました。
羽村堰…
羽村堰では桜がそよ風に揺れています。
白石雪子は桜並木を歩いていきます。
フジタ
法律事務所勤務を経て、法律研究所を設立。司法試験の受験を指導、多数の合格者を輩出してきた。
法律とともに、心理学の専門家でもある。
