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このサイトでは、様々な法律相談にカウンセリングしていく花園弁護士のお話を掲載しています。
今回は、兄の子を生んだ妹はその兄と結婚できるかという相談です。
- じぶんの兄の子を生んだ妹が兄と結婚できるか?
- 兄に対し生まれた子の認知を請求できるか!
などについて、花園弁護士が解説しています。
Contents
兄の子供を産んだ私は兄と結婚できますか?
弁護士ビル5階の花園法律事務所では、接見室のテーブルを挟み、クライアントの女性と花園弁護士が対座しています。
「お茶をどうぞ」
花園弁護士はテーブルに載せられた紅茶を勧めます。
「はい。ありがとうございます」
女性はお茶を一口啜りあげます。
「ご用件はホームページの問い合わせフォームで拝見しましたが、その内容に変わりはございませんか」
「はい。ございません。実は兄の子を生んだ妹のわたしが、兄と結婚できるか、ご指導をおねがいします」
「はい。それはおなじ血の通った兄弟同士の結婚ですから、法的には近親婚禁止の問題になりますが・・・」
「近親婚禁止の意味がよくわかりませんが」
「ええ。血のつながった親等の近い者同士の結婚を禁止する仕組みです」
「あ、そうですか。兄とわたしも血がつながっています」
「カウンセリングは長くなりますから、楽な姿勢でお聞きください」
花園弁護士は背筋を延ばし、カウンセリングの姿勢になります。
近親婚の禁止、問題解説、生まれた子の認知請求は!花園弁護士のカウンセリングは!
フォームで拝見したお話によりますと、お兄さんは交通事故で半身不随だそうですが、アパートの賃貸料で生計には心配ないそうですから、これを前提にお話ししましょう。
結論を先にいえば、お兄さんと結婚するわけにはいきません。ただ生まれた子の認知は請求できます。
その理由を順番に述べていきましょう。
近親婚の禁止とその範囲と理由!
まず近親婚は民法で禁止されています。
近親者同士で結婚すると、遺伝の関係で奇形児が生まれるような危険性がありますから、禁止したわけです。
- 民法第734条では、直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
- 第817条の9の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
と規定されています。
ですから、兄と妹、姉と弟、叔母と甥、叔父と姪は結婚できません。
これに対し、父母や祖父母の養子、養親の実子等義理の関係であれば結婚できます。
親族の定義はなにか!
ここには、聞きなれない言葉がでてきましたので、念のため、似たようなカテゴリーを確かめてみましょう。
親族、親等、血族、姻族など人間の血縁関係にかかわるカテゴリーです。
まず「親族」ですが、民法は、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を「親族」として定めています(民法第725条)。
ですからここに規定された範囲の人が法律上の親族になります。
この規定では「親等」のカテゴリーがでてきますが、
- 民法第726条 第1項は、
親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。と規定し、 - 第726条 第2項は、
傍系親族の親等を定めるには、その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による。
と規定しています。
これは親等の計算基準を定めた規定です。
血族と姻族とは!
それでは「血族」と「姻族」はどう区別されるのでしょうか。
血族とは法において血縁の繋(つなが)っている者です。
言い換えれば自然的に血がつながっているか、法的に認められて血縁関係にあるとされる者です。
血族には「自然血族」と「法定血族」とがあります。
そのうち「自然血族」は、相互に自然の血縁関係つまり生物学上の血縁関係にある者をいいます。
自然血族には「直系血族」と「傍系血族」があります。
祖父母、父母、子、孫などが直系血族です。
これに対し傍系血族は叔父、叔母、甥、姪、兄弟、「いとこ」などです。
法定血族とは、法律の規定により血族とされる者をいいます。
法定血族は準血族とか人為血族ともいいます。
姻族とは、 配偶者の一方からみて他方の配偶者の血縁関係にあたる者をいいます。
婚姻関係にある配偶者の一方が、単独で養子として縁組を行った場合、養親と他方の配偶者との間に姻族関係が成立するかについては見解が分かれています。
兄妹の結婚、実例は!
いよいよ「兄妹の結婚」について考えましょう。
あなたとおなじように、「兄の子を妊娠した」実例をあげておきます。
兄の子を妊娠したクライアントの心理相談
兄とは高校生の時からお互いに異性として意識し始め、現在は大学進学にかこつけて兄と2人で生活しています。
もちろん兄とわたしが肉体関係に入り、わたしが兄の子を妊娠したなど、両親は夢にもおもっていないでしょう。
兄との結婚は無理かもしれませんが、「事実上の夫婦」として愛児を育てていきたいと考えています。
もし兄の子を産むという選択をしたとき、両親には正直に話すべきでしょうか。
それとも誰も知らない所に駆落ちするしかないでしょうか。
ドクターのカウンセリング
婚姻届けをだす法律上の結婚はできません。ですから事実上の夫婦として愛児を育てていくしかかありません。ご両親には一生言わないでおくのが親孝行という気がします。
もし産むという選択をしたなら、お子さんにも真実は隠し通すのが愛情というものではないでしょうか。
お子さんのショックを回避するためです。
この事例でなされたカウンセリングの内容は、あなたの事案に当てはめられます。
参考にしましょう。
不適法な婚姻は取消しされる!
念のため「婚姻の取り消」という仕組みをコメントしておきましょう。
仮にあなたがお兄さんとの婚姻届けを提出したとして、近親婚だから受理してはならないのに、誤って受理されると、一応は婚姻が成立します。
しかし成立した婚姻は不適法な婚姻として取り消される可能性が残ります(民法第七百三十一条から第七百三十六条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない)。
兄との子供を認知請求はできるか!
お兄さんと妹のあなたは、法律上の結婚はできませんが、「この子はわたしの子である」と認める意思表示としての「認知」をするよう請求できます。
近親婚の問題について解説し終えた花園法律事務所の接見室
花園法律事務所の接見室では、花園弁護士のカウンセリングが終わったようすです。
「どうも長くなりましたが、結局、法律上の婚姻は無理です。生活に経済的な心配はないそうですから、半身不随のお兄さんをケアされながら、愛児を育てていくことは可能でしょう。認知はしてもらうことも可能です」
花園弁護士はライターでタバコをつけ、天井に向け紫煙を噴きあげます。
「はい。よくわかりました。ありがとうございました」
「手数料はどうでしょうか」
「お時間のあるときに口座振り込みで結構です」
「はい。ありがとうございました」
女性は女の事務員が開いたドアから廊下に消えていきます。
フジタ
法律事務所勤務を経て、法律研究所を設立。司法試験の受験を指導、多数の合格者を輩出してきた。
法律とともに、心理学の専門家でもある。