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このサイトでは、様々な法律相談にカウンセリングしていく花園弁護士のお話を掲載しています。
今回は、「25歳の息子が精神異常で暴力男に変身したのでなんとか合理的な対策を立て息子を保護したい」という相談です。
25歳の成年者を拘束できるか。事実上の拘束はどうか。蔵のなかに閉じ込めてもよいか。強制的に入院させる方法はあるか。無駄使いさせない対処法はどうか。
これらの問題について、信頼できる花園弁護士が懇切に解説します。
Contents
精神異常になった息子を救いたい!拘束・強制入院など適切な対応は?
いつのまにか25歳に成長した息子は大学を卒業して恩師の研究室に残り、司法試験を受験し、3回目の受験で「論文式試験」に合格しています。
どういうわけか、その年の「口述試験」に跳ねられ、その翌年、2回目の口述試験を受けたのですが、また、跳ね飛ばされ、もう一度、スタートラインに戻り「短答式試験」からやり直しです。
一度は論文式試験に合格した実力はありながら、なぜか、論文式試験の受験資格がもらえる短答式試験にさえ、合格できません。
その後、5回も不合格の連発でストレスが蓄積され、おかしくなって、酒に溺れ、家族に暴力を奮うようになっています。
そこで、やむなく屋敷のなかの徳川時代に建てた蔵のなかに閉じ込め、食事だけ差し入れる措置をとっています。
蔵のなかにベッドを持ち込み、建築現場で使っていた仮設トイレを蔵のなかに設置していますから、普通の暮らしはできる状態です。
縄で縛っていないので、監禁にはならないと考えています。
でも警察に発覚すると面倒になるでしょうから、近所には内緒にしています。
息子の年齢は25歳です。一人前に成長した成年者をこのまま拘束できますか。
蔵のなかに閉じ込めた事実上の拘束は監禁罪になりますか。
息子を強制的に入院させる方法はありますでしょうか
それに、無駄使いさせないための対処法はどうでしょうか。
家族に暴力を振るう長男への対応は!花園弁護士のカウンセリング!
ご事情はよくわかりました。
結論を先にいえば、25歳の成年者を拘束することはできません。
事実上の拘束はできませんから、蔵のなかに閉じ込めると監禁罪が成立します。
強制的に入院させる方法はありますし、無駄使いさせない法的な対処法もあります。
順番に、その理由をコメントしましょう。
暴力を振るう長男の正体は!
長男は司法試験に失敗したせいか、ストレスの蓄積で精神的に異常な状態なったのですから、正常な判断能力が欠如している疑いがあります。
しかし、一人の「自然人」ですから、法的には権利能力を有する「権利の主体」です。
つまり一人の人格者として生活関係で生ずる権利義務の帰属主体になります。
正常な判断能力を有する人は、じぶんの意思で「法律行為」をすることができます。
しかし正常な判断能力に欠ける人は、後見、保佐などによる他人の保護が必要です。
監禁罪は成立するか!
まず、長男を蔵に閉じ込めると監禁罪になるでしょうか。
監禁は人の行動の自由を剥奪する違法行為です。
縄で縛るなど物理的に行動を束縛するほか、室内で動きまわるのは自由だが、室外に出られない状態でも監禁になります。
ですから長男を蔵のなかに閉じ込めると監禁罪が成立します。
現行犯逮捕はできるか!
長男が暴れて家族が傷つけられた状態では、現行犯として逮捕できるでしょうか。
この状態のときは、110番通報すれば、パトカーが駆けつけて長男を逮捕するでしょう。
それでは、パトカーが到着する前に家族数人で長男を抑え込み逮捕できるでしょうか。
民間人は他人を逮捕拘束する権限がありません。家族の間でも逮捕はできません。
しかし、現行犯のときは犯罪行為が明確ですから、警察官でなくても、犯人を逮捕できます。
家族で長男を押さえ込んだあと警察が来て長男は連行されますから、当面は長男の保護とはいえませんが、警察が「措置入院」の措置をとれば、長男は病院で保護されましょう。
惨いようですが、長男が暴力を奮って家族に傷を負わせる状態になったときには通報するようにしましょう。
治療を受ければ長男の保護になります。
措置入院はどうか!
それでは、「措置入院」はできるでしょうか。
措置入院とは、患者の本人に対して行政が命令して入院させる措置です。
精神的な疾患のため、じぶん自身を傷つけるとか、他人を傷つけるなど、他人に迷惑をかけることや、犯罪行為をする可能性が高いケースにおいて、患者に命令して入院を強制する行政措置です。
措置入院は強制的な命令ですから、患者本人やその家族の意思は考慮されません。
この命令は、市民からの通報、警察官からの通報、検察庁からの通報があったときに発動されます。
その結果、強制的に入院されますから本人の自由は拘束されますが、専門病院で治療を受けられますので結果的には患者の保護になります。
法定後見制の活用!
さら法定後見制の活用も考えられます。
法定の後見制度は、本人の精神障害の程度によって以下のように分類されます。
後見
精神上の障害によって判断ができない人を対象として保護する制度です。
保佐
精神的障害によって判断能力が「著しく不十分」な人を保護する制度です。
金遣いの荒い長男には、保佐の制度の活用をおすすめします。
補助
精神的な障害により判断能力が「不十分」な人を保護します。
法定後見制度の手続きは!
最後に法定後見制度の手続きを見ておきましょう。
法定後見制度の手続きは次の手順になります。
申立て
まず本人とかその家族が、家庭裁判所に対し後見を開始する申立てをします。
この申立ての手続きは、こちらで引き受けますからコメントはしません。
家庭裁判所の審判
申し立てを受理した家庭裁判所は、後見を開始してよいかどうかを調査します。
その調査の結果を見て、後見開始の判断をします。
必要に応じて「成年後見人」を選びます。
家庭裁判所調査官の調査
調査は家庭裁判所調査官が担当します。
具体的には、当事者の事情を聴くとか、本人との関係者にヒアリングをします。
精神鑑定について
調査した結果として、本人の判断能力がどの程度かを正確に把握する必要があるケースでは、精神科の医師に精神鑑定を依頼します。
後見の開始
これまでのステップを経ていよいよ後見の開始となります。
具体的には、後見人が選任され、後見人による被後見人のサポートが開始されるわけです。
暴力を振るう精神異常の長男への対処法解説を終えた花園法律事務所の接見室
花園法律事務所の接見室では、クライアントと花園弁護士が対座しています。
「ええと。これまで見てきた結果として、事実上の拘束はできませんから、蔵のなかに閉じ込めると監禁罪が成立します。蔵から解放しましょう」
「はい。わかりました」
「そして、強制的に入院させる方法はありますし、無駄使いさせない法的な対処法もありますが、とりあえず、措置入院の仕組みを活用して、長男を専門病院に入院させましょう。
治療の効果が出て、退院してから、無駄遣いできないように、後見制度も活用する手続きをとりましょう」
「はい。よくわかりました。ありがとうございました」
クライアントは起立して深く頭をさげ、接見室から廊下へ消えていきます。
フジタ
法律事務所勤務を経て、法律研究所を設立。司法試験の受験を指導、多数の合格者を輩出してきた。
法律とともに、心理学の専門家でもある。