花園法律事務所webへようこそ
このサイトでは、様々な法律相談にカウンセリングしていく花園弁護士のお話を掲載して
います。
今回は、「スーパーで万引きと誤認され名誉を棄損された人の損害賠償請求事件」です。
万引きと誤認して密告した客の女性、万引き扱いした監視員、スーパーの経営会社に対し、名誉棄損に基づく損害賠償請求訴訟を提起できるか。
人権派として高名な花園弁護士がじっくり解説していきます。
Contents
万引きと誤認され名誉棄損された!スーパー店員と経営会社に対し損害賠償を請求するには?
わたしは、元高校教員の川村ともうします。
音楽科を担当していまして、作詞作曲もできます。
妻は3年前にガンで死亡し、一人娘はわたしの教え子と結婚したので、今のわたしは一人暮らしです。
週に一度は30分ほどかけ、ショッピングカートを押しながら歩いてスーパーで食料品を購入しています。
先月の土曜日に、いつものように食品売り場で牛肉を物色していると、後ろから男性の店員に呼び止められ、わたしはまるで万引きの容疑者のようにユニフォームの店員に監視されながら、買い物をする羽目に突き落とされました。
わたしが野菜売る場でブロッコリーとレタスをじぶんのカートにいれるのを見た顧客からスリがいると、監視室に通報されたらしい。
あとでわかったのですが、万引きと勘違いした顧客からの通報を真に受け、店員が監視するようになったそうです。
いつものように、レジのカウンターのうえに食品を満載した買いものかごを載せました。
顔なじみのレジ担当女性店員はニコリと微笑み、レジをすすめていきます。「万引き扱いされています」と彼女にいうと、「まさか。長年のたいせつなお客さんが万引きすはずないでしょう」と苦笑しました。「ほれ、わたしのうしろに監視役がいます」というと、「あら、ユニフォームがいますね。何かの間違いです。このお客さんが万引きなどするはずがありません」。
レジ係の言葉を無視して、監視役は監視を継続しました。
レジを通過してすぐ、監視を継続してきた店員を呼び止め、「店長を出してください」と要求しました。「それはできません。お詫びします」と監視員は頭をさげました。
「店長に会わせろ」、「いえ。できません」と押し問答が続きました。
周りの顧客が集まってきました。
わたしは大恥をかきました。
わたしは食品をカートに整理して店外に向かいました。
監視役の店員は、わたしを追いかけ、「もうしあけありません」と頭をさげました。
「衆人環視で大恥をかき、警察に被害届を出して名誉棄損罪で告訴します」
わたしはそう言い残して、ショッピングカートを押しながらバス通りに入りました。
無実なのに万引き扱いされ大恥をかかされた、この不満をだれにぶっつければよいのでしょうか。
不法行為を理由に損害賠償を請求する手順をご指導ねがいます。
告訴の手続きもおねがいします。
不当に万引き扱いされた事件、花園弁護士のカウンセリングは!
ご事情はよくわかりました。
結論を先にいえば、これは不法行為に基づく損害賠償請求事件になります。
通報した顧客の女性、監視した店員、スーパーを経営する会社に対して慰謝料を中心とした損害賠償を請求できます。
その理由を順にコメントしましょう。
不法行為の正体は!
本件は不法行為の案件ですから、まず「不法行為の正体」を明らかにしましょう。
不法行為とは「故意」または「過失」によって他人の権利を侵害する違法な行為です。
不法行為については民法で規定しています。
故意または過失による行為がなされたこと、そのために他人の権利が侵害されたこと、その行為と発生した結果との間に因果関係があると不法行為が成立します。
本件は、過失による不法行為が成立します。
会社に対する使用者責任を追及しましょう!
まず、川村さんを監視し続けた店員を使用する「使用者としての会社」に対し「使用者責任」を追求できます。
民法で規定する「使用者責任」は、特別の不法行為責任ですから、過失がなくても逃げられない「無過失責任」と解釈されています。
ですから、スーパーを経営する会社に対して名誉を棄損された慰謝料を請求すれば、勝訴できるでしょう。
監視した店員に対して責任を問えるか?
それでは、スーパーで買い物をする川村さんを最後まで多数の顧客が見つめる店内で監視を継続した店員に対しても、損害賠償を請求できるでしょうか。
監視した店員は、万引きと勘違いして通報した女性の通報を真に受けて、監視を継続したのですから、「万引きと誤認した過失」が認められ不法行為が成立します。
ですから、この店員に対しても損害賠償を請求できます。
通報した顧客に対して損害賠償を請求できるか?
さらに、川村さんがブロッコリーをカートに入れるのを見て、万引きだと誤認して監視室に通報した顧客に対して損害賠償を請求できるでしょうか。
この女性は真の万引きかどうかをよく確かめないで万引きと誤認したのですから、過失が認められます。
そうだとすれば、顧客の女性に対しても不法行為に基づく損害賠償を請求できます。
名誉棄損罪として告訴できるか!
最後に、このような行為を名誉棄損罪として警察に告訴できるでしょうか。
事実を適示(てきじ)して他人の名誉を棄損したときには、名誉棄損罪が成立します。
この名誉棄損罪は刑法によって規定された、れっきとした犯罪です。
そこで被害届を警察に提出してから名誉棄損罪として告訴できます。
万引き誤認で名誉起訴、その対応を解説し終えた花園法律事務所の接見室
花園法律事務所の接見室では、花園弁護士がソファーにもたれています。
「これで万引き誤認その対応についてカウンセリングは終わりですが、何かおわかりにならないことはありますか」
花園弁護士は、背筋を伸ばして川村の顔を覗き込みます。
「はい。先生のご説明はよくわかりました」
「そうですか」
「明日の午後に事件を正式に依頼したいのですが、費用はどのくらい用意したらよいでしょうか」
「とりあえず着手金として5万円ほどご用意ください」
「はい。わかりました」
「それから、委任状の作成に必要となりますから、印鑑をご用意ください」
「はい。わかりました。懇切丁寧にご説明いただき、ほんとうにありがとうございました」
川村はたちあがります。
花園弁護士も立ち上がり、接見室のドアに手をかけ川村を送りだします。
川村は深く頭を垂れ、廊下に消えていきます。
フジタ
法律事務所勤務を経て、法律研究所を設立。司法試験の受験を指導、多数の合格者を輩出してきた。
法律とともに、心理学の専門家でもある。