高橋ゆかりさん(女性・20代)
失恋がこんなに悲しいものだなんて、私は今まで知らなかった。
大好きだった人を失うこと、それはまるで、大好きだった人が亡くなってしまうことと同じ感覚みたい。
そんなことまで考えた。
あのとき、別れてしまったことの悲しさよりも、そこから立ち上がって生きて、彼を忘れる作業と向き合うことの方がうんと時間はかかったし苦しい時間だった。
別れ、それは突然やってくる。
それは、日常生活までも影響を及ぼし精神を崩壊するものだった。
失恋に至るまでの経緯
彼との出会い、秘密にしていたこと
合コンで出会ってすぐに私は好印象を抱いた。真面目でよく笑う素敵な人だった。彼も私のことを好きになってくれた。出会って1ヶ月後、告白をされて、付き合うことになった。でも私には後ろめたいことがあった。
そもそも、その合コンが開催されたのは、私がワンナイトで一夜遊んでしまった男により開かれたものだった。私も本気で彼氏を作ろうと思って、合コンに参加していなかったので、彼氏になる人がその中にいるとは思いもしなかった。遊んでしまった男の後輩が彼氏だったのだ。彼氏に告白されたとき、それが一番引っかかった。でも言いたくなかった。こんなに大好きな彼を失いたくないと思った。彼がどんな反応をするか分からないけど、彼の先輩と一度遊んでしまったことは墓場までもっていこう、そう思った。
楽しい時から音信不通期へ
大好きだった。彼と同じ時間を過ごす時はいつも笑っていた。交際は順調で彼と結婚したいと思っていた。私には夢があった。それは仕事で成し遂げたい夢だった。その夢を叶えるためには1年、地方で研修を受けなければならなかった。遠距離恋愛になることがとても寂しかったけど、彼は大丈夫だよ、近いよ。と応援してくれていた。それはとても苦しい研修で睡眠時間を削られる程、勉強しなければならなかった。知らない土地で1人で生活しながら勉強に追われる日々は苦しかったが、彼の存在により救われていた。彼がいるから頑張ろうって思ったし、次会える日を楽しみに日々歯を食いしばりながら夢に向かって進んでいた。
そんな矢先だった。突然連絡頻度が少なくなった。それは本当に突然だった。忙しくて、しばらく放置した。しかし、おかしいなって頭の片隅でいつもモヤモヤしていた。何度か電話もかけた。無視された。結局1ヶ月ほど無視され続けた。辛かった。理由を言われずに分からないまま突然無視される、これはひどいなと今でも思う。勉強するのもしんどくて、連絡がとれないことにイライラした。何でって思った。
辛くて辛くて、お願いだから出てよ、と言う気持ちをこめて、一瞬だけ電話無理?と連絡をしたら彼から着信があった。
深夜の失恋
驚いた。電話をとると、音信不通だったことを追求するのが怖くて、何事も無かったかのように明るく振る舞い、早口で近況報告を一方的にした、笑顔で。でも、核心に触れるタイミングはやってきた。何で連絡してくれなかったの?と聞いた。彼は初めて話しだした。ゆかりはもし職場の先輩と俺が遊んでたって知ったらどう思う?そう切り出された。私は忙しさと彼とは喧嘩もなく順調だったので、そんなことは忘れてしまっていたのだ。度肝を抜かれた思いだった。どう言う意味?と聞いたけど、それがどういう意味なのかすぐに分かった。付き合ってたなら俺は何とも思わんかもしれんけど遊んだという事実が無理、先のことが考えられなくなった。そう言われた。彼をすごく傷つけてしまった。私は彼を騙してしまっていた。大罪を犯したんだ。一度でも遊んだ人の後輩である彼は、今後その人と一緒に仕事をするかもしれないと思ったら無理。と言われた。涙が溢れてきた。馬鹿なのは自分で、失恋したのは自分のせい。そんなことがなかったら別れずにすんだ。自業自得だった。でも受け入れられなかった。夢かと思うほど、彼を失うことは考えられなかった。もう一生会えないの?と泣きながら聞いたが、大げさだね。とはぐらかされた。なぜか、ごめんな。と謝られた。それも辛かった。私も謝った。でも彼を傷つけた罪は私の方がはるかに大きい。もう無理なの?と何度か聞いた。今は無理。そう言われて、電話を切られた。時間が止まった。深夜0時半頃だったが眠れなかった。声をだして泣くのなんていつぶりだろう。それからは地獄の日々だった。日々の勉強や課題は変わらずあったが、夜中に涙が出て眠れなかった。毎日眠らずに生活していたら、体調を崩した。熱が出ても勉強をした。辛かった。精神的に限界だった。頼る人がいなかった。こんな理由で失恋したなんて誰にも言えなかった。毎日1人になると泣く。そんな日々を送ると夢なんてどうでもよくなってきた。無気力になった。疲れた。
帰省
わずか半年で研修をリタイアした。あの状態で続けることは出来なかった。実家に帰省した。職も何もかも失った私を受け入れてくれたのは地元だった。古くからの地元の友人には全てを話すことができて、話をゆっくり聞いてくれた。実家のご飯が美味しかった。忙しい日々からも解放されて、心身が落ち着いたのは友人と家族のおかげだった。ただ夜中に涙がでて、電話での会話を思い出すことは続いていた。毎日、友人と会って、それが気分転換となり、気持ちが落ち着いていった。友人と旅行に行ったり、スポーツジムに通ったり、彼のことを意識的に忘れるようにした。
失恋を克服するのは2年かかった
私はこの失恋により、夢を諦めた。今は関係ない仕事をしている。夢を諦めなければよかったと思うことは何度もあった。けど、これが、彼を傷つけてしまった天罰なのだろうと思う。因果応報という言葉があるが、まさにこの世はそんな風にできているんだろう。彼を傷つけたことによって別れなければならなくなった。自分のせいで、というのが辛かった。隠し事はしたらいけない、そう思った。彼とは最初から付き合うことが間違っていたのだ。彼には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。この悲しみを乗り越えるのはしんどかったが、克服できたのは周りの支えと時間だった。周囲の支えがなかったら、今も私はどうなっていたのか分からない。失恋は悲しいものであるが、こんな風に誰かのことを好きになれてよかったとも思う。だけど、できれば味わいたくない。この経験があったからこそ、今ある目の前の大切な人や家族、友人を大切にしたいと思う。
失恋して、これから恋愛する人へ
今から恋愛をする人は、仕事がどんなにしんどくて、ストレスがたまったとしても、決して、不倫や男遊びはしない方がいい。当たり前のことである。安きにながれずに、寂しさに流されずに、真面目に生きることが大切だ。そして、やましいことがあったとしたら、その人と関わる人とは関わらないことが大切だ。隠したいことがある人の近い人は危ない。それも当たり前だ。全ては好きという気持ちが邪魔になるが、そこだけは、忘れないでほしい。また、付き合っている人、大切な人には、隠し事をしないでほしい。これも当たり前のこと。相手を大切にするとはそういうことなのかと思う。もしも、自分が原因で悲しい失恋をした人がいたら、きっと時間はかかるけど、反省をしてほしい。それが罪滅ぼしになるのかな。反省をする時間を神様に与えられ、それが天罰であると受け入れてほしい。そしてとことん嫌になるほど、現実と向き合って生きるしかないのだ。悲しいことがあったから今の私がつくられた。そう思う。